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編集長のズボラ料理(808) せせりの塩酒粕漬け焼き

焦げないように注意して

 テレビのコマーシャルで、最期に食べたいものを聞かれ、「シャトーブリアン」と答えるシーンがあった。食べたことがないこともあって、牛肉のどこの部位なのか知らない。
 そう書いたのだが。ふと気づいた。食べたことがあっても、名前がどこの部分の肉を指していて、味の違いはどうかを、全く知らないではないか。グルメでないので、どうでもいいけど、と開き直っているが。
 友人に会い、昼食として急に鉄板焼きをごちそうになった。牛肉を焼く前に聞かれた。「ロースにしますか、ヘレにしますか」。グルメでもないし、鉄板焼き自体、食べる機会がないので、心の準備ができていなかった。
 しかもシェフは美人の女性。いっそう焦った。その時、友人がヘレを注文した。そこで、僕はロースにした。知らない人は、すぐ他人の真似しをしたがるので、そう思われたくない。本当は知らないのに、ささやかかな見栄なのだ。でも、反省した。牛肉の部位くらい、知っておかねば。
 それからしばらくして、娘夫婦と洋食屋さんでランチを食べることになった。いくつかのセットがあり、まず娘がヘレステーキの定食に決め、娘婿はサーロインステーキに決めた。次は僕で、しばらく考えてタンシチューを選んだ。真似しはせず、しかも部位が分かりやすいからだ。
 牛肉に比べ、鶏肉は庶民的なので、焼き鳥屋さんには抵抗なく行ける。しかし、肉の部位の名前は牛肉以上に難解だ。
 奈良県のブランド鶏、大和肉鶏を使った焼き鳥屋さんに行った時のことだ、背肝、白子、ギンカン、銀皮、ふりそで、ぼんじり、といったさまざま部位がメニューに並んでいた。何のこっちゃ。
 今回のズボラは、スーパーで売っていたせせりを使う。鶏の首周りの肉を指す。何のこっちゃの部類だが、首の肉はわずかだろうから、食用にするには、せせり取る必要があるだろうから、せせりの名前がついたのだろう。
 せせりをしばらく塩酒漬け漬けておく。軽く白だしをふって、オーブンで両面を焼く。
 マグロの中落ちも、せせりに似たイメージがある。中骨の回りの肉を、スプーンでこそげ落とす。どちらも庶民的な食べ物なのに、結構いける。泥臭い名前ではあるが、名前と味は関係ないのだ。(梶川伸)2025.06.28

更新日時 2025/06/28


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